破砕のメカニズム
静的破砕剤による破砕機構模式図
静的破砕剤の主成分である酸化カルシウムは、水と接触すると化学反応(=水和反応)によって
水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を生成し、時間経過とともに異方性の六角板状結晶へと成長(膨張)していく。
実際の施工において、コンクリートや岩盤などの被破砕体に穿った孔内へ、水と練り混ぜた静的破砕剤を充填すると、水酸化カルシウムの生成に伴って六角板状の結晶圧が、相互に押し合う膨張圧となる。
すると膨張圧は孔内に作用する放射状の圧縮応力となり、この圧縮応力と直角方法に引張応力が生じる。
この引張応力が被破砕体固有の許容引張応力を超えた時点でひび割れが発生することになる。
静的破砕剤の水和反応と膨張
膨張前
膨張後
静的破砕剤の自由膨張
脆性物体の代表である岩石やコンクリートは、圧縮強度に比して引張強度は1/10~1/15と小さく、
引張強度は岩石で大略4~7N/mm2、コンクリートで1.5~3.0N/mm2である。
したがって現場における被破砕体の拘束条件を考慮して適切な破砕設計(孔間隔、孔配列、孔長など)を行えば、
30N/mm2以上の膨張圧を発現する静的破砕剤を用いることにより、多くの岩石やコンクリート構造物を破砕することができる。
下記に小型モルタル供試体による静的破砕剤の充填から亀裂発生までの経過写真です。
①充慎
②膨張開始
③亀裂発生
④亀裂進展
充填した静的破砕剤は水和の進行に伴い膨張する。
その圧力が小型モルタル供試体の引張強度以上になると亀裂が生じ、その後も膨張し続けることにより、亀裂が進展していく。
このような破砕機構は、火薬類などの瞬発的エネルギーによる破砕とは異なり、
亀裂発生→亀裂伝播→亀裂幅拡大、といった順序を経るため、静かな破砕が可能となる。
静的破砕剤の特徴
Point 1
毒物・劇物を含まず、かつ危険物ではないため、火薬類取締法等の規制を受けず、誰でも、何処でも簡単に破砕作業を行うことができる。
Point 2
被破砕体の穿孔時を除いては、破砕時の騒音がなく、振動、飛石、粉塵、ガスなどの発生がないため、安全、かつ環境公害のない破砕作業が可能である。
Point 3
30N/mm2以上の膨張圧が発生するため、適切な破砕設計を行えば、様々な条件の岩石やコンクリートを破砕することができます。
静的破砕剤は静かな膨張で破砕する為、他工法と比較して騒音・振動の低減に大きく寄与出来ます。
また、取扱いも火薬類取締法や消防法等の法的規制を受けない為、誰でも取り扱うことが出来ます。
静的破砕工法と他工法の特性比較
静的破砕剤の種類
使用する条件に応じて、亀裂発生時間の異なるタイプを選定出来ます。
標準型
破砕時間目安:12~24時間
選定理由:作業性・コストを重視する場合。
速効型
破砕時間目安:1~3時間
選定理由:限定された時間内で確実に破砕を行なう必要がある場合。
施工の流れ
周囲の環境を考慮し、穿孔方法(クローラードリル、ハンドドリル、コアドリル等)を決定する。
被破砕物・2次破砕・撤去の方法に応じた破砕設計を作成。
穿孔径・穿孔方向・破砕時間目安を考慮した破砕剤の選択。
本施工前に予備破砕を行なうことにより、効果を確認し本施工に着手。